オペアンプの種類は星の数ほどある。
適当なものを選んでしまうと、発振してしまったり、出力が張り付いてしまったりと期待する動作をしてくれない。
本記事ではオペアンプを選定するのに最初に知っておくべき基本用語をまとめてみた。
- 1. 入力オフセット電圧(Vio)
- 2. 入力バイアス電流(Ib,Ibias)
- 3. 入力オフセット電流(Iio)
- 4. 入力換算雑音電圧(Vni)
- 5. オープンループゲイン(Av,Gv)
- 6. ゲイン帯域幅積(GBw)
- 7. スルーレート(SR)
- 8. 電源電圧変動除去比(SVR,PSRR,PSR)
- 9. 同相入力電圧範囲(Vicm)
- 10. 同相入力電圧(Vic)
- おまけ. レールツーレール
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例として、一般的なオペアンプのNJM4558のデータシートと照らし合わせながら基本用語をまとめていく。
1. 入力オフセット電圧(Vio)
出力電圧が0Vになる時の入力端子の+端子とー端子の電位差
NJM4558では、typ0.5mV,max6mV
増幅回路ではこれがゲイン倍されて出力にオフセットとして出てくる。
なのでゲインを高くする場合の対策はバイポーラのオペアンプを選ぶとよい。
(CMOSやJFETは入力オフセット電圧が高いことが多い)
2. 入力バイアス電流(Ib,Ibias)
入力部にあるトランジスタのベース電流のこと。
入力端子に流れ込む、もしくは入力端子から流出する微少な電流のこと。
Ib = (Ib+ + Ib-)/2|
PNPトランジスタ(NJM4558など)→吐き出し方向の電流
NPNトランジスタ→吸い込み方向の電流
ゲインを決める抵抗に流れてオフセット電圧の原因になることがある。
つまり、入力バイアス電流(Ib)が大きいと、出力にオフセットが発生し、誤差となる。
従って、高い精度が求められる場合は、使用する抵抗の大きさにも依存するが入力バイアス電流がnAオーダー、もしくはpAオーダーと極めて小さい品種を選ぶ必要がある。
CMOSやJFETはFETのゲート電流なので常温では数pA程度だが温度依存性があり、高温になると数nA。
(チョッパアンプや入力バイアス電流をキャンセルする回路が内蔵されている製品もあるため、電流値の大小をプロセスで一概に言う事はできない)
NJM4558では、typ25nA,max500nAとなっている。
キャンセル方法は一応あり、詳細は以下サイトを参照してほしいがR3を入力すること。
※入力オフセット電流による誤差は補償できない。
3. 入力オフセット電流(Iio)
入力バイアス電流の項目でも少し出てきたが、
+入力バイアス電流(Ib+)と-入力バイアス電流(Ib-)の差。
Iio = |(Ib+ - Ib-)|
差動入力トランジスタのペア特性(hFE,VBE)が一致しないことから、オペアンプの出力電圧を0Vとしても、それぞれの入力端子に流入または流出する入力電流に差が生じる。
入力オフセット電流(Iio)が大きいと、こちらも出力にオフセットが発生し、誤差となる。
NJM4558では、typ5nA,max200nAとなっている。
4. 入力換算雑音電圧(Vni)
規定された周波数帯域におけるノイズの大きさを表す。
オペアンプ内部で発生する雑音電圧をオペアンプに入力された雑音があるかのように換算した値。
出力雑音を利得で割ることで入力換算雑音を求めて評価する。
出力にはゲイン倍された入力換算雑音電圧が現れるが抵抗から発せられる熱雑音も加わるので計算は複雑となる。
低雑音なオペアンプの場合は単位がVrmsではなく、入力換算雑音密度(nV/√Hz)として単位周波数当たりのノイズ電圧密度として掲載してる場合もある。
入力換算雑音電圧密度で表記された製品の中でどの程度が低いと言えるかというと、非常に低い製品では、1kHzにおいて1nV/√Hzを下回るものもあるが、アナログ半導体業界では、数十nV/√Hz以下であれば「低雑音品(ロー・ノイズ品)」とうたっているケースが多いようだ。
NJM4558では、1.4uVrmsとなる。
5. オープンループゲイン(Av,Gv)
オペアンプ単体の電圧ゲインのこと。
遮断周波数より高い周波数では-6dB/octの傾きでゲインが減少していくので遮断周波数より低い周波数でのゲインが表記されている。
NJM4558では、min86dB、typ100dBとなる。
※位相補償が内蔵されているオペアンプは-6dB/octから乖離していく。
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6. ゲイン帯域幅積(GBw)
電圧ゲインと周波数の積。
GBWはある周波数に対する電圧ゲインの積であらわされる。
→高ゲインと高周波数はトレードオフとなる。
高周波まで平坦な高ゲインを維持したい場合はGBwが高いものを選ぶとよい。
NJM4558では、3MHzとなっている。
7. スルーレート(SR)
単位時間当たりの出力電圧変化の最大値。
方形波を入力したときの出力電圧を10~90%の変化量を時間で割った数値。
スルーレートが不足すると、出力波形にひずみが発生する。
正弦波の周波数(f)と振幅(Vp)とスルーレートは以下の関係がある。
正弦波:v(t)=Vp*sin(2πft)
微分:dv(t)/dt=2πfVp*cos(2πft)
最大変化率:Som=dv(t)/dt max=2πfVp
この最大変化率より大きなスルーレートを持つオペアンプを選定する。
つまり、出力電圧と増幅帯域によって必要なスルーレートが決まる。
例) 最大出力電圧5Vrms、最高出力周波数100kHzの最大変化率Somは、
Som=2*3.14*100KHz*5V*1.41=4.43V/us
NJM4558は1V/usで足りないため、これより早いスルーレートのオペアンプを選定する必要がある。
8. 電源電圧変動除去比(SVR,PSRR,PSR)
電源電圧の変動により入力オフセット電圧は変動し、出力電圧が変化してしまう。
電源電圧の変動量と入力オフセット電圧の変動量の比がSVR(supply voltage rejection)もしくはPSRR(power supplyrejection ratio)、PSR(power supply rejecion)という。
この値が大きいほど出力電圧への変動が小さくなる。
NJM4558では、90dB程度。
9. 同相入力電圧範囲(Vicm)
オペアンプが正常に動作する入力電圧のこと。
入力信号を電源電圧近辺まで入力した場合は予期しない出力波形になる。(範囲を超えた入力の部分は出力が反転したり)
NJM4558では、電源V+/V-=15Vの条件で同相入力電圧範囲はtypで±14V。
(15Vフルでは使えない)
10. 同相入力電圧(Vic)
同相入力電圧範囲とは別に、同相入力電圧という項目がある。
+端子と-端子を同電位に設定した状態でICの特性劣化や破壊なしに印加可能な最大電圧を示す。
こちらは電気的特性というより絶対最大定格の項目となる。
NJM4558では、±15V。
同様に動入力電圧も+端子と-端子の間にICの特性劣化や破壊なしに印加可能な最大電圧値を示す。
この電圧は+端子、-端子どちらを基準としても良く、二つの端子間の電圧差のことを指す。
おまけ. レールツーレール
同相入力電圧範囲で分かるように、両電源オペアンプは電源電圧いっぱいいっぱいまで出力電圧としては出せない。
前述したようにNJM4558は電源電圧フルまで入力することはできない。
一方単電源オペアンプはフルまで出力できるものがある。
それをレールツーレールという。
厳密には、入出力で分かれており、
入力をフルまで入れられるのが、入力レールツーレール。
出力をフルまで入れられるのが、出力レールツーレール。
入出力をフルまで入れられるのが、入出力レールツーレール。
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