オペアンプのゲイン設定用の抵抗値はどのくらいがいいのかまとめた
抵抗値が大きすぎる場合の問題
入力無信号でも出力にオフセット電圧が発生
入力バイアスによってオフセット電圧発生
※入力バイアス:オペアンプの入力に流れる電流
バイポーラオペアンプ(入力バイアス大)の場合
例)NJM4558
入力バイアス電流→typ:25nA.max:500nA
汎用のNJM4458はPNPトランジスタなのでオペアンプの入力側から外部に流れ出す方向。
例)R1:10MΩ、R2:90MΩ
オペアンプのマイナス端子側から見た抵抗はテブナンの定理より、
R1//R2=R1*R2/(R1+R2)=9MΩ
ここに、max500nA流れてしまうと、4.5V(=9MΩ*500nA)もオフセット電圧が発生してしまう。
(typ25nAでも、0.225V(=9MΩ*25nA)もオフセット電圧が発生してしまう。)
→入力信号が小さい場合はオフセット電圧が比較的大きく見えてしまう
CMOS,JFETオペアンプ(入力バイアス小)の場合
25度など室温程度であればバイアス電流が小さく、オフセット電圧もそこまで影響がないが、CMOSオペアンプは温度が上がるとバイアス電流が大きくなってしまうので注意。
例)TLC272
・25℃
60pAの入力バイアス電流→540uV(=9MΩ*60pA)の出力オフセット電圧
・80℃(産業用機器での使用温度)
2nAの入力バイアス電流→18mV(=9MΩ*2nA)の出力オフセット電圧
・125℃(軍用での使用温度)
35nAの入力バイアス電流→315mV(=9MΩ*35nA)の出力オフセット電圧
→高温まで考慮する場合は、上記の汎用バイポーラオペアンプ並みのオフセット電圧となってしまう。
室温程度では問題なさそうだが製品を製造してからに問題がでることも。
基板上にホコリがついたりして、湿度が高くなるとリーク電流が大きくなる
→雨の日などは動作がおかしい、息を吹きかける(ホコリが動く)と出力がふらつく等
発振しやすくなる
オペアンプの入力端子には大体3pF程度の寄生容量がついている。
(さらに基板パターン等にも寄生容量がある。)
この容量とフィードバック回路の抵抗でLPFを形成してしまう。
例)トータルの静電容量:4pF、抵抗:9MΩ
カットオフ周波数(-3dB下がる周波数):fc=1/(2π*R*C)→4.4kHz
この周波数で位相が45°遅れるので、大きなリンギングが出るか、最悪発振してしまう。
そうならないように安全を摂ると4.4kHzも帯域としては取れず、実際には数百Hzとなってしまう。
どうしても大きな抵抗値を使いたい場合は、位相補償用のコンデンサを付ける必要がある。
コンデンサの動作イメージと使いわけ方~オペアンプ初級者向け簡単解説
その他にも多少のEMCノイズ等でも抵抗値が高いと電圧としては揺れてしまうことになる。
抵抗値が小さすぎる場合の問題
逆に下記のように、抵抗値を小さくした場合を考えてみる。
例)R1:100Ω、R2:900Ω
消費電流が大きくなる
単純に消費電流が大きくなってしまう。
増幅率の精度が落ちる
消費電流が大きくなってしまうことに影響するが抵抗の自己発熱の温度変化により、抵抗値が変化してしまい、増幅率の精度が落ちてしまう。
例)1608のチップ抵抗の定格は100mW程度→100Ωに1mAでギリギリ
・熱電対やひずみゲージなどの微小直流信号
→オペアンプ回路の発熱による熱起電力の影響も考慮する必要あり
・製品故障率
→温度が高いと経年劣化も早く、製品寿命を短くしてしまう
最適な抵抗値は?
数kHz~数百kHzの場合
バイポーラの場合
入力端子から見た等価抵抗:50kΩ以下
出力からフィードバック回路への電流:2mA以下
出力から入力につながる抵抗:数k~数百kΩ
CMOS,JFETの場合
ノイズなどを勘案して更に大きい抵抗値でも良し
高速アンプ(50MHz等)の場合
高速アンプなら小抵抗(500Ω以下)
寄生容量などの影響が大きくなるため抵抗は小さめに設定
例)C=3pF,R=10kΩ→fc=1/(2*π*R*C)≒5.3MHzで45°程度位相遅れ発生
50MHzを目指すならカットオフ周波数100MHz程度として500Ω程度までが妥当
※高速オペアンプは駆動能力も大きいので小抵抗値でも問題なし
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フィードバック抵抗を大きくしたい場合の位相遅れ対策については↓