オペアンプを扱い始めのころは教科書に載っている増幅率でざっくり計算できる。
しかしある程度使い慣れてくるとオフセット電圧に関わるノイズゲインというものに直面する。
そのノイズゲインとは何か。
どのようなときに使うものかオペアンプ初心者にも分かるようにやさしく端的にまとめた。
簡単解説~オペアンプの簡単見分け方覚え方~オペアンプ初級者向け
シグナルゲインとノイズゲインとは
反転、非反転はそれぞれ下記式で表される。
反転増幅回路 :Vout=-(R2/R1)×Vin
非反転増幅回路:Vout=(1+R2/R1)×Vin
反転増幅回路
非反転増幅回路
そして、シグナルゲインとはそれぞれ下記のように表せる。
反転増幅回路 :-(R2/R1)
非反転増幅回路:1+R2/R1
ではノイズゲインとはどう表せるかというと下記になる。
反転増幅回路
シグナルゲイン: GS=-(R2/R1)
ノイズゲイン : GN=1+R2/R1
非反転増幅回路
シグナルゲイン: GS=1+R2/R1
ノイズゲイン : GN=1+R2/R1
ノイズゲインは非反転、反転どちらも非反転増幅回路とみて計算することができる。
ノイズゲインが非反転増幅回路として計算できる理由
オペアンプの入力換算ノイズは、非反転入力端子に加わる電圧源としてモデル化できる。
つまり、下図のように入力端子を全てGNDへ接続して、青部分に電圧源があるとした場合、非反転、反転どちらも非反転増幅回路として見ることができる。
よって、ノイズゲインが1+R2/R1として表される。
もしくは、重ね合わせの理から考えることもできる。
重ね合わせの理とは、
「2個以上の複数の電源がある回路で、回路の任意の点の電流及び電圧はそれぞれの電源が単独で存在した場合の値の和に等しい」と言う考え方。
①一つの電源だけを残して他の電源を取り除いた分離回路の電流や電圧を解析することを複数ある電源の数の分だけ繰り返す
②得られた電流や電圧を合成していく
③元の回路の電流や電源を求めることができる
という便利な定理。
このような電源ごとの分離回路が重なって見えることから重ね合わせの理(重ねて合わせる)と呼ばれている。
その重ね合わせの理から、信号源とノイズ源を分けて考えることができる。
信号源を排除してノイズ源に対して増幅率を計算する。
(Viは重ね合わせの理から短絡で考える)
下図で、
VIN(+)端子はGNDと考えるとイマジナリーショートの観点からVIN(-)端子もGNDと考えられる。
従って抵抗R1とR2の間の電位はVNIになる。
R1を流れる電流 I1はオペアンプには流れないので、全てR2に流れる。
I1 = VNI / R1
従って、VOのノイズ電圧 VNOは、
VNO = VNI + R2 × VNI / R1 = VNI × (1 + R2 / R1)
ノイズゲイン ANは VNO / VNI になるので下記となります。
AN = 1 + R2 / R1
このように、ノイズゲインが1+R2/R1として表される。
ノイズゲインの適用箇所
主にノイズゲインを考慮する場面は、単純に入力換算ノイズだけでなく、下記のようにオフセット電圧等にも適用される。
- 入力換算ノイズ
- 入力換算ノイズの出力に現れる大きさの計算
- オフセット電圧が出力に現れる大きさの計算
- 回路の周波数特性の計算
まとめ
このようにオペアンプを利用した回路ではノイズゲインの考え方が重要。
ただ色々と述べたが、ノイズゲインは反転、非反転どちらも、非反転増幅回路として考えれば良いということだけをまずは覚えておこう。
参考
ノイズゲインを理解するとそれに関係してくるオフセット電圧等が気になってくる。
余裕が出てきたら下記の要素も考慮に入れて設計をしてみよう。
入力バイアス電流 IB
2つの入力端子に流入または流出する入力電流の平均値
IB = (IB- + lB+) / 2
入力オフセット電流 Iio
出力端子電圧が0Vのとき、 2つの入力端子に流入又は流出する入力電流の差
Iio = |IB- + lB+|
-端子と+端子の入力バイアス電流の差を入力オフセット電流と呼ぶ。
2つの入力に流れる電流(の平均値)がオフセット電流、 両者の差(ばらつき)がバイアス電流と覚えておけばよい。
入力オフセット電圧 Vio
出力端子を0Vにするために必要な入力2端子間の差電圧
オフセット電圧への対処法
オフセット電圧が大きいアンプだとゲインを大きくすると出力電圧がオフセットされるので注意。
オフセット電圧(Vos)
NJM4558:max6mV
OPA2277P:max50uV
→オフセット電圧が気になる場合、OPA2277Pのような高精度アンプを使う。
この入力で発生するオフセット電圧もノイズゲインからどの程度出力にオフセット電圧が出るか計算できる。
入力バイアス電流への対処法
フィードバック抵抗のR1とR2の並列抵抗を+端子に直列に入れることで補償回路になる。