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EMCや回路作成にも役立つ絶縁距離の算出方法

絶縁型スイッチング電源などは10年以上の長期間、安全に電力を供給し続け、火災や感電などの事故が起きないよう安全設計が必要。
安全設計として安全規格や、絶縁距離の算出方法をまとめておく。

安全規格とは

ユーザーが感電や火災を起こさないように回路各部に適切な絶縁を設ける。

絶縁(Insulation)は電位の異なる導電物同士を絶縁物で隔てて電位に応じた距離 (絶縁距離) を離し電流を流さないようにすること。

例えば空気や基板材料を絶縁物として基板上の配線同士の距離を決める。

この絶縁距離を決める指標が安全規格。

この安全規格は電気製品を販売する際に使用者を感電、火災などから守るために最低限守らなければならないルールのこと。

どの国も国際規格であるIEC規格を基に安全規格を策定している。

IEC規格を遵守することで, どの国の安全規格もおおむね遵守できる。

電源は単体では使われず最終製品の一部品として使われるため、最終製品がどんなものかで取得すべき安全規格が変わる。

例えば情報技術機器のときはIEC62368 - 1 を取得することとなる。

IEC62368-1に則して策定された日本語JIS C62368-1を参考にすればよい。

安全規格の用語

目的により絶縁方法は回路の部位ごとに異なっている。

そのため絶縁には種類があり、規格書では種類ごとに絶縁距離が決められている。

① 機能絶縁

回路が正しく動作するために必要な絶縁。

設計意図と違う部分に電流が流れて意図しない動作や、火災を防止するための絶縁。

ただ、感電防止が目的ではない。

スイッチング電源では、

  • 1次側の整流後の回路内
  • 2次FG間
  • 2次回路内

に適用される。

② 基礎絶縁

破壊されると感電する恐れがあるレベル。

スイッチング電源では、

  • 1次側の整流前までの回路内
  • 1 次側整流前後
  • 1次-FG間に

適用される。

③ 付加絶縁

基礎絶縁に追加するための別の絶縁になります。

④ 2重絶縁

基礎絶縁と付加絶縁を2つ組み合わせた絶縁のこと。

片方が絶縁破壊しても感電の恐れがない絶縁です。

⑤ 強化絶縁

感電に対する保護が2重絶縁と同等になる単一の絶縁になります。

具体的には基礎絶縁の2倍の絶縁距離になっているなど。

スイッチング電源では、

  • 1次-2次回路間

に適用される。

絶縁のレベルは, 次の関係になる。

機能絶縁<基礎絶縁<2重絶縁=強化絶縁

過電圧カテゴリ

商用電源は雷サージや接続された誘導性負荷の開閉 (モータを動かしたり止めたりするなど) などの影響を受けて一時的に商用電源の電圧が高くなることがある。

この過電圧にどの程度耐えられるかを示すのが過電圧カテゴリ (I~IV)。

コンセントを経由して接続されることが多いスイッチング電源はカテゴリⅡに該当。

汚損度

電気機器が置かれる環境の汚れ度合い(汚損) を示す。

汚損があるほど, 必要な絶縁距離は長くなる。

通常スイッチング電源は汚損度2。

非導電性の汚損だけが発生する場合やオフィスのような空間で使用される機器も汚損度2に該当。

材料グループ

絶縁物の表面のゴミなどが原因で微小な放電が繰り返されると絶縁物が炭化して導電性の経路が形成され絶縁破壊する。

これをトラッキングと言う。

空間距離

安全規格の絶縁距離には空間距離と沿面距離の2つの定義がある。

空間距離とは導電物(基板の銅はくなど) と導電物を直線で結べる最短距離。

目的は商用電源からの過電圧を含む入力電圧や内部で発生するピーク電圧によって

空間中を放電しないようにすること。

必要な距離は下記要素を知ることで求めることができる。

  • 過電圧カテゴリ
  • 汚損度
  • 商用電源の電圧
  • 対象箇所のピーク電圧
沿面距離

2つの導電物間の絶縁物(基板の基材部分など)の表面に沿って結べる最短距離。

目的は2点間の実効値動作電圧や汚損度に対してフラッシュオーバー(気体中の電極間が放電路によって橋絡されること。要は雷のようにショートしてしまうこと。)または絶縁破壊が生じないこと。

必要な距離は下記要素を知ることで求めることができる。

  • 汚損度
  • 材料グループ (耐トラ ッキング性)
  • 対象箇所の実効値

沿面距離を稼ぐにはスリット (溝) を入れる。

ただし汚損度によりスリットと認められる幅は変わる。

通常は汚損度2なので1mm以上 必要。

溝の幅が1mm未満(汚損度2のとき) の場合、 溝とみなされず沿面距離空間距離になる。

→沿面距離を延ばすには基板でスリット (溝) を入れると良いが、空間距離は延ばせない。

このトラッキングが起きにくい材料を比較トラッキング指数 (CTI) で表す。

この値により絶縁物を I, II, Ⅲa, Ⅲbのグループ分けをしたのが材料グループ。

材料が不明な場合はとりあえずⅢbを適用する。

感電の保護方法によるクラス分け

絶縁型AC-DCスイッチング電源は通常、クラス1で設計していることが多い。

クラス1は, 感電に対する保護を基礎絶縁と接地で行う機器が該当する。

基礎絶縁が破壊されると感電する恐れがあるので感電を避けるために接地が必要。

絶縁型AC-DCスイッチング電源では回路を [1次側」、「2次側」、「FG」の3ブロックに分けることができる。

絶縁距離の計算例

実際に下記の条件で図に示す絶縁型AC-DCスイッチング電源のA~Kに必要な絶縁距離をそれぞれ求めてみる。

図に簡略化した電源の回路を示す。

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基礎絶縁が1か所破壊されても2次側は安全な状態が保たれるように絶縁を設計する。

「1次側」は入力から絶縁トランスまでの間の回路のこと。

「2次側」は絶縁トランスから出力までの間の回路のこと。

「FG」 はFrame Ground の略で安全アース(保護接地)に接続される部分。

電源の金属筐体部などがFrame Groundになる。

「アース (接地)」 は大地(地面) と接続すること、 またはその接続している点のこと。

電源に蓄積した静電気や外来ノイズの電荷を逃したり電源が故障により電源の金属筐体に商用電源が加えられときに感電しないように漏えい電流を流したりする。

通常アースは電源のFGと接続される。(FGは金属の筐体と接続されている。)

ヒューズ部分のBに関してはヒューズが切れたとき端端はLとNになるためAと思時距離をとる必要がある。

フォトカプラが細長いのは, この1次-2次の絶縁距離を満足するため。

Iの距離に関しては雷サージを考慮して5mmくらいとることもある。

条件

商用電源電圧:AC100 V

過電圧カテゴリⅡ

汚損度2

材料グループ IIIb

各部の実効値とピーク値は後述の絶縁距離算出結果の表と仮定。

基本周波数はどの回路部位においても30kHz以下とする。

下記で用いる表の数値はJIS C 62368-1から抜粋

JIS C 62368-1:2018 オーディオ・ビデオ,情報及び通信技術機器-第1部:安全性要求事項

最小沿面距離を求める

必要な最小沿面距離を求めるためには、対象の2点間の実効値を測定する。

基礎絶縁と機能絶縁の沿面距離は測定した実効値を使って下記表から求める。

 

電圧の基礎絶縁/ 付加絶縁に対する最小沿面距離(汚損度2/材料グルーⅢb / 周波数30kHzまで)

実効値動作
電圧[V]
最小沿面
距離 [mm]
10 0.4
12.5 0.42
16 0.45
20 0.48
25 0.5
32 0.53
40 1.1
50 1.2
63 1.25
80 1.3
100 1.4
125 1.5
160 1.6
200 2
250 2.5
320 3.2
400 4
500 5

沿面距離はおおむね実効値 動作電圧に比例した値になる

 

 

強化絶縁の沿面距離は基礎絶縁の2倍になる。

通常、測定した実効値が表の値にぴったりなることはないので測定値を上回る実効値の沿面距離を設定するか、測定値を挟む上下の値から線形内挿法 (直線補間)を用いて計算で求めて0.1mmで切り上げた沿面距離でもよいことになっている。

例えば、実効値175Vの沿面距離は200V の2.0mmの沿面距離を用いるか、160V の 1.6mm と 200Vの2.0 mmの関係から175 Vは1.75mmとなる。

切り上げて1.8mmとしてもよい。

最小空間距離を求める

対象の2点間のピーク電圧を測定する。

ピーク電圧は0Vを基準にプラス側とマイナス側で高かった方。

(ピーク・ツー・ピーク電圧ではない)

例えば、入力のL-N 間、つまりAC100Vであれば0Vを基準にプラス・マイナスに141Vあるのでピーク電圧は141V。

空間距離は測定値を使って下記表から求める。

電圧に対する最小空間距離(汚損度2/周波数30kHzまで)

  最小空間距離 [mm]
ピーク動作
電圧[V]
基礎絶縁/
付加絕緣
強化絕緣
330~800 0.2 0.4
1000 0.26 0.52

 

空間距離は、沿面距離よりも短いことが多い

 

機能絶縁の距離は基礎絶縁の値を適用する。

商用電源の過渡電圧の影響を受ける1次側は、要求耐電圧の空間距離も考慮する必要がある。

まず下記表を用いて過電圧カテゴリから主電源過渡 電圧を求める。

主電源過渡電圧

交流主電源
電圧[V]
(実効値)
主電源過渡電圧 [V] (ピーク値)
過電圧カテゴリ
III IV
50 330 500 800 1500
100 500 800 1500 2500
150 800 1500 2500 4000
300 1500 2500 4000 6000

 

入力電圧で, 想定されている過渡電圧が大きく異なる

 

AC100V系なので交流主電源電圧は100Vではなく、150Vを選ぶ必要があり、要求耐電圧は1500V。

下記表より基礎絶縁の空間距離0.5mm、強化絶縁1.0mmをそれぞれ守る必要がある。

要求耐電圧を用いた最小空間距離(汚損度2)

  最小空間距離 [mm]
要求耐電圧 [V] 基礎絶縁
付加絶縁
強化絕緣
330 0.2 0.4
500 0.2 0.4
800 0.2 0.4
1500 0.5 1
2500 1.5 3
4000 3 5.5

1次側の空間距離は、入力電圧で決まることが多い

 

 

つまり、1次内と1次 - FG間は0.5mm、1次 - 2次間は1.0mmの空間距離を確保する。

それぞれの個所での絶縁距離の答え

JIS C62368-1 (IEC62368-1) に則して、図に示す箇所の必要な最小絶縁距離を算出した結果を下記表に示す。

絶縁距離算出結果

箇所 実効値 [V] ピーク值 [V] 沿面距離 [mm] 空間距離 [mm] 絶縁種別 適用箇所
A 100 141 1.4 0.5 基礎 入力相間
B 100 141 1.4 0.5 基礎 ヒューズ前後
C 90 141 1.4 0.5 基礎 整流前後
D 140 140 1.6 0.5 機能 整流後
E 200 400 2 0.5 機能 トランス線間
F 300 540 6 1 強化 1次-2次間
G 100 141 2.8 1 強化 1次-2次間
H 10 20 0.4 0.2 機能 制御回路内
I 100 141 1.4 0.5 基礎 1次-FG間
J 24 24 0.5 0.2 機能 2次回路内
K 100 141 1.4 0.2 機能 2次-FG間

 

必要な絶縁距離は、電源の入力電圧に大きく依存する

 

実際の製品では, その他の規格も取得 / 準拠している場合もある。

その中で最も厳しい絶縁距離を設定する必要がある。

 

 

 

 

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