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スペアナで正しくスペクトラムを測るにはアッテネータと帯域フィルタ(RBW、VBW)が重要

普段使うスペアナについて意外と知らないことも多いので注意する点をまとめておく。

スペクトラムアナライザとは

電気信号の観測において最も頻繁に使用されているオシロスコープは縦軸に振幅 (電圧)、横軸に時間で信号を表示する。

これに対しスペクトラムアナライザ(以降スペアナ)は縦軸に振幅(電力)、横軸に周波数で信号を表示する。

オシロスコープでは矩形波として表示される信号をスペアナで観測すると、矩形波を構成する基本波、2次高調波、3次高調波というように、そこに含まれている周波数成分を解析できる。

スペアナは波形に含まれている周波数成分と、それに対応した電力を測定できる。

例えば無線機器から発信された信号の搬送波 (キャリア)、高調波 (ハーモニクス)、不要輻射 (スプリアス)、または変調解析など無線機器評価に欠かせない各種パラメータを測定できる。

さらに、発振器の位相雑音も測定できるため電子部品の評価にも用いられる。

スペクトラム・アナライザの測定原理

アナログ方式のスペクトラムアナライザはスーパーヘテロダイン方式を採用している。

(ディジタル方式もアナログ式と動作原理はほぼ同じ)

図に示すように、入力端子の直後にアッテネータがあり、中間周波数 (IF: Intermediate Frequency) に落とすためのローカル発振器とミキサがある。

 

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電気製品の EMC/安全適合性 スペクトラム・アナライザ

スペアナによってはミキサの前に、プリセレクタ (pre-selector) と呼ばれる帯域通過フィルタがある場合もある。

入力信号はここで所望の中間周波数に変換され、IFアンプを通り、RBWフィルタ(IFフィルタ)で周波数分解能を調整する。

例えば下記図のように入力信号(Fin 900/1000/1100MHz)、ローカル発振器の信号(Fl が500/600/700MHz)とそれぞれミキシングされたとする。

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スペクトラムアナライザの基礎と概要 TechEyesOnline

中間周波数はFif = Fin±Fl が出力される。

ここでIFフィルタは400MHzとすると、

Fif = Fin-Fl の信号がIFフィルタを経由してログアンプに送られる。

つまり内部では入力周波数が固定の中間周波数として処理される。

ミキサひずみとは

ミキサに振幅の大きな信号が入力されると、ミキサの非線形性によるミキサひずみにより高調波が生じ測定に影響をおよぼす可能性がある。

具体的には、基本波を10dB大きくすると2次高調波ひずみは20dB、3次高調波ひずみは30dB増加する。

最悪の場合は、ミキサを破損するケースもあるのでアッテネータを活用することが重要。

アッテネータの減衰量を増やすと高調波ひずみが減る

例えば-10dBmの入力信号に対し、アッテネータを10dBと30dBにを変えた場合の高調波ひずみを考える。

◆dBmとは◆ スペクトラム解析では電力で振幅差の大きい信号を取り扱うので、1mWを基準(=0dBm)としてP(dBm)=10×log10(P(mW))で変換したdBm(デービーエム)という単位が使われる。

例えば1Wの場合は、P(dBm)=10×log10(1000mW)=30dBm、1µWの場合、P(dBm)=10×log10(0.001mW)=-30dBmと表現される。

dBとの違いはというとdBというのは、「変化分」。

分かりやすい覚え方としては電位と電圧(電位差)の関係に似ているので下記のような関係性で覚えておくとよい。

dB→電圧(電位差)

dBm→電位

例えばある無線機の出力を表す時に「出力が30dB」ではなく、「出力が30dBm」と表現する。

逆に、出力20dBmの信号が増幅されて30dBmになった場合「増幅率は10dBm」ではなく、「増幅率は10dB」と表現する。

dBmとdBの足し算引き算は下記のようになる。

[dBm]+[dB]=[dBm]
[dBm]-[dB]=[dBm]
[dBm]-[dBm]=[dB]

アッテネータ減衰量を10dBにしたとき、入力信号は-20dBmでミキサに入力されるが、スペアナの画面上に高調波ひずみが観測されたとする。

これに対し、減衰量30dBにした場合は-40dBmまで入力信号が減衰するため高調波ひずみは発生しなかったり小さくなる。

ノイズフロアは悪化する

しかし30dBのアッテネータを入れた場合は10dBのアッテネータを入れた場合と比較してノイズフロアが悪化する。

ひずんでる信号の切り分け方法

入力信号と内部のミキサのどちらがひずんでるのか、切り分けるにはアッテネータの減衰量を増減させることで確認できる。

測定結果が変化する→スペアナがひずんでる

測定結果が変化しない→入力信号がひずんでる

分解能帯域幅 (RBW) とビデオ帯域幅 (VBW)

スペアナの周波数分解能を変えるために分解能帯域幅(RBW: Resolution Bandwidth) を設定する。

RBWを狭めることで周波数分解能を高められるだけでなくノイズフロアも下げられる。

具体的には、RBWを1/100に設定すると、そのデシベル計算値 (この場合-20dB)でノイズフロアが変化する。

ただし、必要以上に狭帯域にすると掃引時間が長くなってしまう。

さらにビデオ帯域幅 (VBW: Video Bandwidth) を変更することで測定信号の平滑化をすることができる。

下記図にRBWとVBWを変更したときの例を示す。

図26. 分解能帯域幅(RBW)の設定(設定周波数幅の違いによる観測結果の違い)

 

図28. ビデオ帯域幅(VBW)の設定によるノイズによるレベル変動の平均化

スペクトラムアナライザの基礎と概要 TechEyesOnline

使用時における注意点

大きな信号を入力するとミキサを破損する場合がある。

安全に使用するためには、信号入力の前にアッテネータを最大に設定してから全帯域を観測するとよい。

そして必要に応じて外部、または内部アッテネータを設定してから測定を開始する。

DC電圧の入力には注意。

最大入力電圧はアッテネータ前段に入っているブロッキング・コンデコンサの耐電圧で決まるが、搭載されていない製品もある。

こうした製品は、外付けのDCブロッキングコンデンサの使用をすること。

 

 

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