電気回路設計者はオペアンプ回路を見たとき、どのようなタイプのものか、なるべく即座に分かると何かと便利である。
これまで回路設計者にもかかわらず、アナログ回路をあまり理解せず、避けてきた自分にも分かるよう、まとめてみた。
そのタイプの見分け方覚え方をできるだけ簡単に、端的に分かるよう記しておく。
まずはオペアンプ(OPアンプ)を使った回路は大きく分けて以下の3種類(+α)としてを覚えておけば、ほぼOK。
まずは反転アンプ、非反転アンプ、差動アンプを基本編として覚えて、
計装アンプは発展編として考えてもよい。
それぞれの増幅率の出し方はイマジナリーショート(仮想短絡)を考慮してキルヒホッフの式に当てはめればすぐに出せる。
それでは以下にそれぞれの特徴をまとめておく。
反転アンプ
プラス側の入力端子が接地or電源接続。
マイナス側入力端子の抵抗で増幅率設定。
抵抗を介して入力端子に信号が入るため入力インピーダンスが低くなることがある。
Vout=-(R2/R1)×Vin
ちなみにプラス側入力端子に抵抗を挟むとバイアス電流によるオフセットをキャンセルできる。(なくても動作自体はする)
出力オフセット(入力がゼロの時に出力に現れる電圧)が気にならなければつけなくてもよい。
入力バイアス電流への対策方法と対策定数計算式~オペアンプ初級者向け簡単解説
非反転アンプ
マイナス側の入力端子が接地or電源接続。
マイナス側入力端子の抵抗で増幅率設定。
※ただし、増幅はマイナス端子で行うので抵抗介して接続。
抵抗を介さず、入力端子に信号が入るため入力インピーダンスは高く保てる。
Vout=(1+R2/R1)×Vin
要は、回路としてはR1,R2の構成は反転アンプと同じだが、
反転アンプ:その先のR1に入力信号を入れる
非反転アンプ:プラス側の入力端子に入力信号を入れる
という違いだけだ。
入力インピーダンスの違いも、
上記の観点からも、
反転アンプ:その先のR1に入力信号を入れる→→入力インピーダンスはR1次第
非反転アンプ:プラス側の入力端子に入力信号を入れる→高入力インピーダンス
となる。
非反転アンプの場合、
バイポーラのオペアンプなら、数MΩ(例:NJM4458はtyp5MΩ)
ボルテージフォロワ
非反転アンプでR2=0としたものが増幅率1倍のボルテージ(電圧)フォロワ
※R1≒∞
ボルテージフォロワはインピーダンス変換やバッファ用途によく用いられる。
差動アンプ
4つの抵抗からなり、上下の抵抗が同じ定数。
抵抗を介して入力端子に信号が入るため入力インピーダンスが低くなることがある。
Vout=(R2/R1) × (Vin+ - Vin-)
反転、非反転のOPアンプは反転 (-) 入力、非反転(+)入力のいずれかを信号基準 (0V、あるいはSG) とする不平衡回路で使用していて片側グラ ウンド→シングルエンドとなっている。
それに対して、差動増幅回路はマイナス側とプラス側の入力端子に入る同相電圧は排除できる。
排除できる比率をCMRR(同相除去比)といい、上記4つの抵抗のR1同士、R2同士が同じ抵抗値であればあるほど除去することができる。
計装アンプ
前段の2つが非反転アンプ、後段が差動アンプで構成される。
CMRR(同相除去比)が高い。
差動アンプだと差動アンプの項目で書いた通り、入力インピーダンスを100kΩ程度までしかできないが、
非反転アンプを前段に入れている計装アンプであれば高くできる。
ただし高周波では性能出ない。
(方形波入力等だとスパイクノイズのような出力になることも)
前段の上下の間の抵抗(RG)で利得設定。
この抵抗を無視(RG≒∞)して考えればボルテージフォロワとなる。
この計装アンプのチップは大体1~1000倍程度の利得設定を行うことができる。
AD8221など主にTI、アナログデバイセズ、マイクロチップ社などから多くの品種が用意されている。
上記、反転アンプ、非反転アンプ、差動アンプ、計装アンプとは違う、発展形としてアクティブフィルタというのもあるので、そのあたりも今後まとめていく。
これまで述べてきた大体のアンプに言えることだがゲインを上げると使用できる周波数帯域が下がるので、そのあたりは注意が必要となる。